腰の痛み

成長期のアスリートを悩ませる腰痛について-腰椎分離症-

成長期のアスリートにとって腰椎分離症ようついぶんりしょうは、長期間の運動休止を余儀なくされる腰の疲労骨折です。さらに厄介なのは、腰痛が比較的早い段階で改善されることも多いことです。

中途半端な骨癒合や骨の成熟度合いのままで患部へのストレスがかかってしまうと、骨折部が完治せず将来ひどい腰痛(腰椎分離すべり症)につながるとされています。

また、成長期におけるアスリートの腰痛において腰椎分離症の発生件数は多いとされています。

成長期腰椎分離症は全疲労骨折の 48.9%~64.1%とされ、成長期スポーツ障害の中でも発生頻度が高い。また成長期腰椎分離症の発生頻度は腰痛患者の 33.2〜35%とされ、腰痛患者の中でも発生頻度は高いとされている1

腰痛のある 18 歳以下のスポーツ選手において、47%が腰椎分離症の診断を受けている2

小中学生において2週間以上続く腰痛患者の実に45%が分離症であった。3

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約3〜4割が腰椎分離症の可能性があるため、成長期のアスリートが腰痛を訴える場合その可能性を視野に入れて適切な対応していく必要がありますね。

そのため、腰椎分離症の特徴やそれにつながる身体の特徴(原因)を理解して予防や適切な治療が求められます。

この記事では、腰椎分離症の特徴的な症状からその原因とリスクとなるような身体機能面での特徴をまとめていきたいと思います!

こんな人におすすめ!

  • お子さんが腰痛に悩んでいる保護者
  • お子さんの分離症を未然に防ぎたいと考えている保護者

10年以上整形外科の現場で多くのスポーツ選手へリハビリサポートし、サッカー現場でも多くの選手をサポートしてきた自分が見てきたケガについてリアルな部分をまとめていきます。

分離症の原因とは?

分離症は、特定の動きを繰り返すことで腰(腰椎)の一箇所に負担が集中してしまった結果引き起こる疲労骨折と考えられています。

腰椎分離症に関連する運動方向として腰椎伸展、回旋、伸展+回旋が関連する4

腰をそらす動き(伸展しんてん)や上半身をひねる動き(回旋)、それらを複合的に動かす時に腰椎の中でも骨折しやすい部位へ集中的な負担がかかるとされています。

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伸展と回旋ではそれぞれ腰椎への負担の加わり方が異なるため、折れ方にも違いがあるとされています。そのため、MRI画像で折れ方を確認すると何が原因だったのかある程度推測することができると言われています。

参考文献・画像引用5

分離症による痛み

分離症の痛みは主に以下のように言われています。

分離症による痛み

  • 腰をそらしたりひねったりした時の腰痛
    (分離初期段階の場合、前にかがんだ際にも腰痛が出現することもあるので注意)
  • 鋭い痛みで限局した腰痛
    (片側のみに出現すことも多い)
  • 腰の骨を押した時の痛み

また、このような痛みの出かたは分離症を発症してからの期間によってもすこし異なると言われています。

初期の症状

  • お尻や太ももにも痛みが出現する
  • 運動時のみの痛みで安静にすれば改善する

進行期の症状

  • 安静にしていても腰痛が改善されない
  • 立つ・座るなど日常生活動作でも痛い

終末期の症状

  • 下半身の痛みやしびれが出現
  • 痛みがなくなっていることもある…
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初期・進行期・終末期などそれぞれの定義は以下の画像を参考にしてください!

身体機能面での危険因子

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分離症につながる過度な腰をそる動きやひねる動きは、姿勢の崩れや患部(腰)以外の動きの硬さから誘発されると考えられています。

ncreased lumbar lordosis, abdominal muscle weakness, hip flexor tightness, hamstring tightness, thoracolumbar fascia tightness, femoral anteversion, genu recurvatum, and thoracic kyphosis also predispose.6
訳)腰椎前弯の増大、腹筋の筋力低下、股関節屈筋の硬さ、ハムストリングの硬さ、胸椎後弯などがその素因となる。

こちらの研究報告では、分離症につながる原因として姿勢の崩れとそれに伴う(もしくは姿勢の崩れの原因となる)下半身の筋肉の柔軟性低下が関係していると報告しています。

こちらの記事では、sway backに対するおすすめのストレッチ方法など紹介していますのでご興味があるかたはぜひご覧ください!

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予後・復帰までのスケジュール

分離症に対するリハビリにおける最大のゴールは「骨折部の癒合」「分離すべり症の予防」が挙げられます。

これらの目標が達成されないと、再骨折や将来的なひどい腰痛につながる危険性が高まるとされているためです。

発症から骨癒合やスポーツ復帰までにかかる平均的な日数は以下のように報告されています。

骨癒合が得られるまでには2.5~5.7ヶ月の期間を要する7

骨癒合を目指したアスリートではスポーツ復帰までに平均4.7±1.59ヶ月を要し、そのうち3.4ヶ月+1.5ヶ月は運動休止及び硬性体幹装具着用による骨癒合を目指すための期間であった。8

しかし、骨癒合の確率や分離すべり症につながるリスクは治療介入を始めた際の病期や発症年齢によって異なるとされているため、それぞれの特徴も理解しておく必要があります。

画像内参考文献9

骨の成熟度や分離症自体の病期判定はMRIでないと確定できないため、症状が落ちつていたとしても必ず医療機関に受診し、専門家の診断を受けましょう。

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再骨折や分離すべり症への予防のため、長期の運動休止を余儀なくされることもあり選手にとっては非常につらいケガの一つです。しかし、ここを甘くしてしまうと将来さらに辛い思いをしてしまうため、将来的を見据えた適切な対応ができるようにしましょう。

腰椎分離症かどうかの判別方法としてさまざまな方法があります。

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しかし、確定診断を行うにはこれだけでなくMRIやCTによる画像診断が必要となるので、気になる場合は必ず医療機関へ受診し精密検査を受けるようにしましょう!

自覚症状の有無

右のリストのような症状がある場合は、分離症の可能性が高いため注意が必要となります。しかし、このような自覚症状がなくても分離症を患っている可能性があるので注意しましょう。

自覚症状チェックリスト

  • 腰をそったりひねったりした際の腰痛
  • 成長期で運動時に腰痛を認めるが安静にしていれば改善される
  • 1-2週間以上続く慢性的な腰痛
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分離している部位へ過負荷をかける腰をそる動きやひねる動きで腰痛が出現する場合は、分離症の可能性が非常に高いです。また、長期間放置していると安静しても改善されなかったり、下半身のしびれも出現します。

Kemp testケンプテスト

このテストは、腰に負荷をかけ痛みを誘発させて分離症の有無を確認する方法です。

しかし、分離症でない腰痛でも痛みが誘発されることもあるため必ずしも分離症というわけではありません。

Kemp testは感度 0.79,特異度 0.17,偽陽性率 0.83,偽陰性率0.21 であった。(中略)診断精度が高いとは言えなかった。10

とはいえ、腰へ負荷を変えるような動きで痛みの有無を確認することで分離症の可能性を疑うことはできます。そのため、このような動作を行い痛みがある場合は精密診断によって確定できるよう医療機関へ必ず受診しましょう。

こちらの動画内では神経症状に対してと紹介していますが、分離症に対しても有効な方法です!

今回はジュニアアスリートに多い腰痛、腰椎分離症について特徴的な症状から鑑別方法についてまとめていきました。

確定診断および適切な治療には医療機関による介入が必要ですが、より大事なのは腰痛を感じてからすぐに医療機関へ受診し適切な治療を受けることです。

分離症は、骨癒合を第一優先するために多くの競技時間を奪われてしまうためにジュニアアスリートにとっては非常にショッキングなケガです。

予防をすることが一番大事ですが、腰痛を感じた時は分離症の可能性も頭に入れ、経過によっては早期の段階で医療機関を受診し適切な治療を受けましょう。

参考文献

  1. 三宅 秀俊ら:成長期腰痛患者における腰椎分離症患者の特徴:日本臨床スポーツ医学会誌:Vol. 29 No. 2, 2021. ↩︎
  2. )Micheli LJ, Wood R. Back Pain in Young Athletes:significant difference from adults in causes and patterns. Archives of Pediatrics & Adolescent Medicine. 1995; 149: 15-18. ↩︎
  3. ↩︎
  4. Soler T, et al:The prevalence of spondylolysis in the Spanish elite athlete. Am J Sports Med 28:57-62,2000. ↩︎
  5. 笠舛 拓也:スポーツ外傷・障害後のスポーツ復帰「腰椎分離症」:臨床スポーツ医学,文光堂,2024,p693. ↩︎
  6. Vij N, Naron I, Tolson H, Rezayev A, Kaye AD, Viswanath O, Urits I. Back pain in adolescent athletes: a narrative review. Orthop Rev (Pavia). 2022 Aug 5;14(3):37097. doi: 10.52965/001c.37097. PMID: 35936806; PMCID: PMC9353696. ↩︎
  7. sakai T, et al:Conservative treatment for body healing in pediatric lumber spodylolysis.Spine 42:E716-E720,2017 ↩︎
  8. kasamasu T, et al:Rats of return to sports and recurrence in pediatric athletes after conservative treatment for lumber spondylolysis .spine surg relat res 6:540-544,2022 ↩︎
  9. 藤本 秀太郎ら:疲労骨折を克服する-予防から最新の保存療法戦略まで-「腰椎分離症」:臨床スポーツ医学,文光堂,2023,p714. ↩︎
  10. 三宅 秀俊ら:成長期腰痛患者における腰椎分離症患者の特徴:日本臨床スポーツ医学会誌:Vol. 29 No. 2, 2021.  ↩︎

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