足首をねんざしてしまうことはスポーツをやっている上で避けては通れないというほど結構な確率で受傷している選手が多いです。
他のケガと比べると治りが早いものでもあります。(程度にもよりますが。)しかし、セラピスト・トレーナー側からするとあまり軽視できなくてむしろ厄介なケガでもあると考えています。その理由はこちらの記事にまとめていますので、ぜひ参考にしていただけると。
このような後遺症に悩まされないようにするには、ケガをしてから適切なリハビリ・ケアをする必要があります!
復帰までに必要な要素を整理しながら、後遺症やパフォーマンス低下に悩まされないためのリハビリ・ケアについて2回に分けて紹介していきます!
こんな人におすすめ!
- ねんざを頻繁に繰り返している選手・保護者
- ねんざから復帰できたけどパフォーマンスが上がってこず悩んでいる選手・保護者
- 現在、ねんざから競技復帰にむけてリハビリを頑張っている選手・保護者
目次
自己紹介
10年以上整形外科の現場で多くのスポーツ選手へリハビリサポートし、サッカー現場でも多くの選手をサポートしてきた自分が見てきたケガについてリアルな部分をまとめていきます。
ねんざのリハビリポイント
リハビリのポイントは大きく分けて2つあります。
冒頭で消化した記事でも言及しましたが、足首のねんざはひねった反動によって足首周りの靭帯を過度に伸ばしたり傷つけてしまうことをいいます。
ポイントのひとつにこの傷がちゃんと治癒できるかどうかが挙げられます。
ポイント1-靭帯の損傷をしっかりと治す-
靱帯の傷をしっかりと治すにはある程度の期間も必要です。
定義1 | 復帰までの期間2 | |
Ⅰ度損傷(軽度) | 外くるぶしの前下方にある靭帯(前距腓靭帯)の部分損傷 | 1~2週間 |
Ⅱ度損傷(中等度) | 前距腓靭帯の完全損傷 | 3~4週間 |
Ⅲ度損傷(重度) | 前距腓靭帯と外くるぶしの下にある靭帯(踵腓靭帯)の完全損傷 | 5~6週間 (※2~3週間の固定が必要) |
ねんざをした当時に靭帯がどれほど損傷しているかによって靭帯が回復し復帰できる状態まで整えられる目安の期間が推測することが可能となります。
後遺症や痛みが慢性的になってしまい悩んでしまう選手の多くは、傷の治りが万全でない状態で復帰していることがその原因として挙げられます。
こちらの記事ではあくまでも推測ではありますが、初期症状によって復帰までに必要な期間を推測する方法を紹介しています。
あくまでも推測でしかないので、ひねってしまった場合は必ず医療機関を受診し靭帯の状態を医師に確認してもらうようにしましょう。
ポイント2-関節機能を適切な状態まで回復させる-
後遺症に悩む多くケースにおいて、痛みは改善しても関節機能(可動域や周囲の筋力)が完全に回復していないことが原因として挙げられると考えています。
これらの後遺症はさまざまな研究において指摘されています。
軽度から中等度の足関節捻挫受傷患者の自然回復の経過を調査し、(中略)受傷後 1 ヶ月時点での足関足関節底背屈総可動域に健患差を認めた。3
Individuals with chronic ankle instability have limited dorsiflexion range of motion during gait, which may be a risk factor for recurrent ankle sprains.4
訳)慢性的に足関節が不安定な人は、歩行時の背屈可動域が制限されており、これは足関節捻挫を再発させる危険因子である可能性がある。
足首の関節運動は背屈(しゃがみ込む運動)と底屈(つま先立ち)が主としてあります。ねんざをしてしまうとどちらの動きも可動域制限が残るとされています。これが、パフォーマンスの低下やねんざの再発要素として挙げられるため適切な状態にリハビリしていく必要があります。
これら可動域の制限だけでなく、ねんざ後は筋力も自然には回復しないと指摘されています。
足関節背屈筋力は受傷後 1 ヶ月で有意な健患差はなかったが(健患差97%)、底屈筋力には有意差を認めた(健患差83%)5
底屈運動には主にふくらはぎの筋肉が力を発揮しますが、この筋力は素早く走ったり高くジャンプしたりとバネとしての役割を担っています。したがって、この筋力低下はさまざまなスポーツ動作のパフォーマンス低下に直結する要因でもあると考えられます。
痛み・可動域が改善されても筋力的な問題を抱えるケースは少なくありません。元のパフォーマンスで競技復帰するためにも適切な筋力まで回復できるようリハビリを行う必要があります。
ねんざに対するリハビリ-前編-
前編における目指すところ
パフォーマンスの改善および再発予防も考慮してリハビリを進めていくには、細かく順序立ててスケジューリングしていく必要があります。
前編では、以下のような要素を目標にリハビリを進めていきます。
全方向の可動域を改善させていきたいのですが、底屈運動は損傷した靭帯に多少なりのストレスを加えながら行うことになるので、靭帯の修復が完了してからではないと行うことができません。
そのため、靭帯の修復が完了するまでに背屈方向の可動域を全回復(獲得)できることを目標にリハビリを進めていきます。
可動域のチェック方法
背屈可動域の獲得には、アキレス腱周りの柔軟性改善と適切な骨運動の獲得がミソとなります。
リハビリの前に可動域がどれほどなのか確認していきます。
背屈可動域の測定方法
- つま先とひざを壁につけた姿勢でスタート
- ひざを壁につけながらかかとを後方へ引く
- かかとが床から離れない最大限のところで壁と親指のつま先間の距離を測定
※つま先がハの時にならないよう足の内側がメジャーと並行関係を保つよう意識して動かしましょう。
壁から親指のつま先が10㎝以上離れれば合格です!ハの字になっている人も多いのでならないよう注意しながら測定しましょう!
可動域獲得に向けたリハビリ
足首を適切に動かすには距骨と呼ばれる足首を構成する骨の可動性が重要となります。
距骨は、アキレス腱周囲の柔軟性低下や距骨の真後ろを通る足の指の筋肉(長母趾屈筋)の柔軟性低下によって距骨の動きが制限され、背屈運動の可動域が低下してしまうと考えられます。6
ねんざに伴う靭帯損傷も距骨の動きを制限する要因のひとつとして考えられています。
そのため背屈方向への可動域を獲得にむけた治療すべきポイントは以下の3つに集約されることが多いです。
ポイントを踏まえたケア方法を以下にまとめます!
アキレス腱周囲ほぐし
- 内くるぶしとアキレス腱の間を親指と人差し指でつまむ
- つまみながら上下に動かし約30秒間ほぐす
- つまみながら足首を上下に動かしさらにほぐす
長母趾屈筋ストレッチ
- 片ひざ立ちの姿勢でつま先の下に両手を差し込みつま先をそらす
- つま先の反りを保ったままひざを前へ動かす
- アキレス腱・かかと周りに伸張感がでたらゆっくりひざを戻す
- 10回を目安に繰り返し行う
距骨後方誘導
- 足首の前にタオルや硬いトレーニングチューブを当てる
- 後ろにタオルを引っ張りながらひざを前方へ動かす
- 足がハの字になったりひざがつま先に対して内側へ向かないよう注意しながら行う
筋力改善に向けたリハビリ
再発防止に向け、可動域の改善と並行して筋力の改善も必要となります。
そのために必要となるのが、腓骨筋とよばれる外くるぶし周囲を走る筋肉の力です。
この筋肉は、ねんざによって損傷する靭帯と並走するような位置にあるため、足をひねってしまったときに過度にひねりすぎないよう制御する役割を担うとされています。
ケガ直後は力を入れると痛む場合もあるため、痛みに応じて運動を行うことが大切になります。
腓骨筋トレーニング
- 鍛えたい足にタオルを巻き反対足で固定する
- 小指を倒すに押し付けるイメージで力をいれる
- 足の裏が床から離れないよう外くるぶし周囲に力が入っている感覚であればok
まとめ
今回は後遺症に悩まされやすい足首のねんざに対するリハビリについてまとめました。
後遺症の多くに可動性低下が挙げられ、それが原因でさまざまなケガにつながるケースを多く見てきました。
自分は大丈夫だろうと思っていても実際に確認すると全然動いていないことも多々あります。今回ご紹介した内容を踏まえ、チェックして必要であればケアも一生懸命行なってください!
参考文献
- 日本スポーツ整形外科学会HP ↩︎
- 青木 治人.「スポーツリハビリテーションの臨床」.MEDSi.2020 ↩︎
- 小林 匠.足関節捻挫の病態と治療.日本アスレティックトレーニング学会誌.2018.vol.3.No.2.p117-126 ↩︎
- Drewes, L., McKeon, P., Kerrigan, D., & Hertel, J. (2009). Dorsiflexion deficit during jogging with chronic ankle instability.. Journal of science and medicine in sport, 12 6, 685-7 . ↩︎
- 小林 匠.足関節捻挫の病態と治療.日本アスレティックトレーニング学会誌.2018.vol.3.No.2.p117-126 ↩︎
- 片寄 正樹.足部・足関節理学療法マネジメント-機能障害の原因を探るための臨床施工を紐解く-.メジカルビュー社. 2018 ↩︎