足首のねんざはスポーツをしていると必ずと言っていいほど、受傷率の高いケガです。また、再発率が高かったり潜在的な後遺症が多い特徴的なケガです。
このような最初の危険性を最小限に抑えながら後遺症を残さないためにも、ねんざをしてしまってからのリハビリが重要となります。
受傷直後からのリハビリのポイントについては以下の記事でまとめていますのでぜひこちらもご覧ください。
この記事では、競技復帰に向けて必要な身体能力を再獲得するためのリハビリとトレーニング方法についてご紹介していたいと思います!
こんな人におすすめ!
- ねんざをしてから動きにくくなってしまった選手・保護者
- ねんざを何度も繰り返して悩んでいる選手・保護者
- ねんざからスムーズに競技復帰したい選手・保護者
目次
自己紹介
10年以上整形外科の現場で多くのスポーツ選手へリハビリサポートし、サッカー現場でも多くの選手をサポートしてきた自分が見てきたケガについてリアルな部分をまとめていきます。
競技復帰に向けたリハビリのポイント
リハビリのレベルアップ条件は靭帯の治り具合を見て
冒頭で紹介した記事でもまとめていますが、再発防止・競技パフォーマンス低下防止のために必要なリハビリのポイントは大きく分けて2つあります。
初期段階では靭帯の傷の治癒が第一優先でしたが、傷が癒えて競技復帰間近になってくるとより関節運動と筋力の改善にフォーカスを当ててリハビリを進めていく必要があります。
以下の動画では、ねんざに伴う靭帯損傷の有無を判断できるテスト方法が紹介されています。専門家向けの内容となっていますが、同様の動きをして痛みが出現するかどうか確認してみるのもいいかもしれません。
このような関節の動きをした際に痛みが消失していればジョギング(軽運動)から徐々に練習復帰の許可を下します。
(傷が完全に癒えているわけではないのである程度の注意が必要です。)
筋力を最大出力発揮するにも関節の動きが重要
この段階からつま先立ちやケンケン(ホッピング)などの動作を行えるようにリハビリを行なっていきます。そうすることで、速く走るために必要な足のバネを作るトレーニングにつなげることができ、再発防止だけでなくスプリント(全力疾走)のパフォーマンス向上にもつなげることができます。
素早いスプリントには、一歩一歩姿勢を適切状態に保つためにふくらはぎや足の裏の筋力が求められます。
ねんざ後にはこのような筋力の回復がしにくいと指摘されています。
足関節背屈筋力は受傷後 1 ヶ月で有意な健患差はなかったが(健患差97%)、底屈筋力には有意差を認めた(健患差 84%)1
(底屈筋力=つま先立ちのような姿勢の時に働くふくらはぎの筋力)
これらの筋力をトレーニングで鍛えていくのは当然ですが、それだけでは最大限の効果を得られないことも多いです。
それは、つま先立ちや歩行・走行時に足が接地した時の姿勢を保持するのが、筋力だけではなく足首から足先の骨・関節が大きく関わっているからです。
砂浜やぬかるみなど柔らかいところよりもタータンやアスファルトなど硬いところの方が力を入れやすいと思いますが、ねんざをした後はさまざまな要因から緩くなるため、ふくらはぎからすると柔らかいところで力を発揮しなければならず、最大限の力発揮が難しくなります。
この後からは、強固な(剛性の高い)足首にするためにはどうしたらいいのか具体的なリハビリの内容についてまとめています。
スプリントパフォーマンス低下を防ぐためのリハビリ
まずは足首の動きのチェックから!
ふくらはぎの力を最大限に発揮するためにも適切な足首の動きができているか確認していきましょう。
足首の可動性チェック
- 足を一直線にのばしつま先を最大限下へ伸ばす
- 最大限に動かした際の可動範囲と指先が内側へ向いていないか確認
- 指先も最大限に曲げられているか確認しましょう
指先も曲げて足首を下へ最大限に曲げられるかどうかは強固な足首を作る上で重要な動きとなるため、適切に動けているかしっかりと確認しましょう!
動きが硬ければまずはほぐす!
先ほどの動画で硬さが認められた場合、力を最大限発揮する土台を作るために足首周りのほぐし(マッサージ)からはじめる必要があります。
足首ほぐし
- 足を上へ動かし浮き出てくるスジと内くるぶしの間を触る
- 場所がわかったら指を上下に動かしほぐす
足の甲ほぐし
- 親指と隣の指の間を触る
- 骨に沿って間をほぐす
バネを作るトレーニング
足がほぐれて可動域が拡大したらいざトレーニングを行なっていきます。
ふぐれた足首をさらに強固なものにしていくにはふくらはぎだけでなく、足裏の筋力も重要なものとなります。
足裏トレーニング1
- 正座もしくはうつ伏せの姿勢で足先を一直線に伸ばす
- 足先の角度は変えずに指を最大限に曲げる
- 足の裏に力が入る感じであればok
ふだん扁平足気味なひとはこのトレーニングですぐつってしまうので、何回も行えるようトレーニングしていきましょう!
足裏トレーニング2
- 足をひざよりも遠くに伸ばして椅子などに座る
- 指を曲げないようにしながら指とかかとを近づけるように力を入れる
- 足の裏に力が入る感覚であればok
足裏トレーニング3
- 立ったまま足を半歩前に出し体重をややかける
- 指の付け根は床につけたまま全ての指をそらす
- 他の指はそらしたまま親指のみ床に押し付ける
- 足の裏の内側に力が入っている感じであればok
同じ足裏のトレーニングでも1と2・3はかかる負荷の場所がすこし異なり、2・3で鍛えられる筋肉はより体重を支える上で重要な役割を担うとされています。それぞれがちゃんとできるように繰り返しトレーニングしていきましょう!
また、ふくらはぎの筋力と協力してバネの土台として働く筋肉も鍛えていく必要があります。
後脛骨筋トレーニング
- 鍛えたい足を上にして組む
- 足の裏を自分の顔に向けるようにして足を動かす
- 内くるぶしのあたりからふくらはぎの内側に力が入っていればok
これらのトレーニングでふくらはぎが最大限力発揮できる土台をつくっていざふくらはぎのトレーニングを行っていきましょう!
下腿三頭筋(ふくらはぎ)トレーニング1
- 段差から足後ろ半分を出して立つ
- 親指・小指に均等に体重をかけて最大限にかかとを持ち上げる
- かかとが段差よりも下までゆっくりおろす
- ふくらはぎ全体に負荷がかかっていればok
よりスプリントパフォーマンスにフォーカスを当ててトレーニングする場合には、下半身全体の筋力も協力して力発揮できるよう鍛えていく必要があります。
下腿三頭筋トレーニング2
- 両手を壁につけて片脚で立つ
- かかとを数㎝上げたままおじぎをするようにおしりを後方へ引く
- ふくらはぎや太もも裏のハリを感じたら1の姿勢に戻る
※おじぎする際はせすじを伸ばし足の付け根から曲がる意識で姿勢を保ちましょう
まとめ
今回は足首ねんざ後のリハビリ後編として競技復帰に向け取り組んでおきたいケア・トレーニングについて紹介しました!
痛みがなくなっても後遺症として可動域の制限がのこり、それによって筋力の低下およびパフォーマンスの低下につながると考えられています。
何度もねんざを繰り返し、うまく走れなくなってしまった選手やサポートする保護者の皆さんにぜひ参考にしていただきたい内容です!
参考文献
- 小林 匠 足関節捻挫の病態と治療.日本アスレティックトレーニング学会誌.2018.vol.3.No.2.p117-126 ↩︎