ケガについて 膝の痛み

太ももの前をストレッチしても膝の痛みが治らない2つの理由

成長期の膝の痛み(=オスグッド)や膝のお皿(膝蓋骨しつがいこつ)周囲の痛みに悩むトップ・学生アスリートやスポーツ愛好家の人って少なくないと思います。

そしてその原因の多くは、太もも前の筋肉(大腿四頭筋だいたいしとうきん)の柔軟性低下が原因として考えられています。しかし、実際の治療現場ではその部位のストレッチやマッサージのみでは改善できないことを多く経験します。

患者A
患者A

そもそも論、痛みが強い人に対して大腿四頭筋に対するストレッチ(ひざを大きく曲げる動き)を指導すると痛みによってできない人も多くなかなかリハビリが進まないんですよね。

また、大腿四頭筋の柔軟性も勝手に低下するわけではありません。なにか原因となるようなものがあるから柔軟性が低下します。となると、根本的な原因が解決しないと大腿四頭筋のストレッチを継続してもその効果は限定的なものとなってしまいます。

今回の記事では、オスグッドや膝蓋骨周囲の痛みにつながる根本的な原因についてまとめていきます。

こんな人におすすめ!

  • ある程度休んで復帰したら膝蓋骨の周りが痛む人
  • 一生懸命ストレッチをしても膝蓋骨の周りが痛む人
  • オスグッドや膝蓋骨の痛みを予防したいと考えている人

10年以上整形外科の現場で多くのスポーツ選手へリハビリサポートし、サッカー現場でも多くの選手をサポートしてきた自分が見てきたケガについてリアルな部分をまとめていきます。

過負荷につながる重心の後方偏位

オスグッドや膝蓋骨周囲の痛みは、脛骨すねに付着する組織(膝蓋靱帯しつがいじんたい)に対する牽引(ひっぱられる)力が過度に繰り返し加わることで発症すると考えられています。

その牽引力を強める要因に動作中の不良姿勢が挙げられています。

着地やランニング支持期などのスポーツ活動中に重心が後方化し(中略)これに誘発される大腿四頭筋の遠心性収縮やトルクの増大は牽引ストレスの要因となる。1

tepez
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さまざまな動作において上体がのけぞってしまっている姿勢猫背の姿勢が重心が後ろに残っていることを暗示しています。

なぜ重心が後方へ残ってしまうのか

動作中の重心位置を前方へ乗せることができれば、患部へのストレスを最小限に抑えられるのですが、これを意識的に行うにはかなり労力のいる作業となります。

そこで、重心位置を前方へ乗せるために求められるのが、太もも裏(ハムストリング)の柔軟性です。

成長期の男子サッカー選手を対象に軸足ハムストリングの柔軟性とキック動作時の身体重心位置の関係性を調べた研究では、以下のようにまとめています。

軸足ハムストリングの柔軟性と身体重心距離は(中略)有意な正の相関が認められた。(中略)今回の結果から軸足ハムストリングの柔軟性低下とキック動作時の身体重心位置の後方化に関連が認められたため、軸足ハムストリングの柔軟性に着眼していくことが成長期スポーツ障害の予防につながると考えた。2

太もも裏の柔軟性低下は、キック動作時における重心位置を後方に残す原因の一つであるとこの研究では報告しました。

そのため、冒頭でお話ししたように膝の調子を良くするには大腿四頭筋へのアプローチのみならず、根本的な原因である重心が後方に残った不良姿勢やその原因となるハムストリングの柔軟性に対してもアプローチしていく必要があると考えます。

柔軟性だけでなく筋力も求めたい

動作時の姿勢が崩れるのは、ハムストリングの柔軟性低下だけが問題とは限りません。

そのひとつに挙げられるのが、筋力的な問題です。

オスグッド発症者と非発症者の身体的要因に大腿四頭筋筋力・ハムストリング筋力低下3が挙げられています。さらに成長に伴いハムストリングと大腿四頭筋の筋力比が低下する4とも言われています。

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柔軟性が低下するハムストリングは筋力低下も起こしやすく、大腿四頭筋に対してハムストリングの筋力が著しく低下していると、動作中の重心を前方へ預けにくくなってしまいます。

重心を前方へ預けるための筋力

重心を前方へ預けるためには、上半身を意識するよりも下半身とくにおしりから太もも裏を意識する必要があります。

tepez
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支えるための筋力を鍛えるためにもまずは、筋力が発揮されやすいように柔軟性から整えていく必要があります!

こちらの記事では実際に体を支えるために必要な筋力の強化方法についてまとめています。トレーニングをしたいと思う方はぜひ参考にしてみてください!

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今回は、日頃から大腿四頭筋のストレッチを頑張っていてもなかなか改善されない膝蓋骨周りの痛みについてまとめました。

その根本的な改善には動作中の姿勢を変えることが求められます。

その第一歩として太もも裏にあるハムストリングの柔軟性を引き出すことが大事です。

参考文献

  1. 塩田 真史:「Osgood-Schlatter病の病態と治療 発症から復帰までの現状と今後の課題」日本アスレティックトレーニング学会誌 2018,vol.4,no1,p.29-34 ↩︎
  2. 倉坪ら:「成長期男子サッカー選手における軸足ハムストリングスの筋柔軟性とキック動作時身体重心の後方化との関係」日本理学療法学術大会 抄録集 2012,vol.39,no.2 ↩︎
  3. 鈴木英一ら:【Osgood-Schlatter 病の診断と治療】Osgood-Schlatter 病の成因と治療・予防 身体特性と成長過程の観点から.臨床スポーツ医学,23(9):1035-1043,2006. ↩︎
  4. Nakase J, Aiba T, Goshima K, Takahashi R, Toratani T,Kosaka M, Ohashi Y, Tsuchiya H. : Relationship between the skeletal maturation of the distal attachment of the patellar tendon and physical features in preadolescent male football players. ↩︎

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