サッカー選手の特徴的なケガの一つに鼡径周辺部痛と呼ばれる股関節の痛みが挙げられます。
当ブログでも数種類の記事にわけてそのケガのことについてまとめてまいりました。
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今回はこのケガの改善・予防に効果的とされているCopenhagen Adduction Exerciseについて深掘りしていきたいと思います。
このトレーニングは内転筋と呼ばれる太ももの内側にある筋肉を強化するトレーニングで、サッカー選手特有の股関節痛改善・予防に効果的であるとされています。
今回の記事では股関節痛に悩む選手や予防に向けたトレーニングを取り組みたいと考えている選手たちにおすすめの内容となっています!
自己紹介
10年以上整形外科の現場で多くのスポーツ選手へリハビリサポートし、サッカー現場でも多くの選手をサポートしてきた自分が見てきたケガについてリアルな部分をまとめていきます。
Copenhagen Adduction Exercise
トレーニング方法
さっそくトレーニング方法の紹介から!実際のトレーニング動画は以下のYouTubeを参考にしてください!
Copenhagen Adduction Exercise
- 2人1組となりトレーニングしたい足を上にしてパートナーに持ってもらう
- 下側の肘と上の足で支えて足を閉じるように下側の足を持ち上げる
- 頭から足まで一直線になる高さまでお尻(骨盤)を持ち上げる
- ゆっくりと足を下す
上側の足を強く押し付けるように力をいれてお尻を持ち上げるようにしましょう!
科学的根拠
Soccer players with adductor-related groin pain have significantly lower eccentric hip adduction strength compared to asymptomatic players, but no isometric strength differences were observed.1
訳:内転筋に関連した鼠径部痛を有するサッカー選手は、無症状の選手と比較して、遠心性股関節内転筋力が有意に低いが、等尺性筋力の差は観察されなかった。
※遠心性収縮:筋肉が伸ばされながらも力を入れる方法/等尺性収縮:筋肉の長さが固定されたまま力を入れる方法
グローインペインに悩む選手たちの特徴の一つに内転筋そのものの筋力低下が挙げられます。Copenhagen Adduction Exerciseは内転筋力の低下に対して有効とされており、それによって股関節痛の改善につながると考えられています。
Training volume of the Copenhagen Adduction exercise can optimize eccentric hip adduction strength gains and reduce adductor injury risk in male football players.2
訳:コペンハーゲン内転運動のトレーニング量は、男子サッカー選手の股関節内転筋の遠心性収縮力向上を促し、内転筋損傷リスクを低減することができる。
The Copenhagen Adduction exercise, when implemented in-season with an 8-week progressive training program, significantly increased eccentric hip adduction strength, eccentric hip abduction strength, and the EHAD/EHAB ratio in football players.3
訳:コペンハーゲン内転筋エクササイズは、8週間シーズン中に実施することで、サッカー選手において遠心性収縮による股関節内転筋力および股関節外転筋力を有意に増加させた。
このエクササイズの回数に関する研究もあり、週に数回行うことである程度の効果を得ることができると報告されています。
The Adductor Strengthening Programme using one exercise with three progression levels, three times per week during the preseason and once per week during the competitive season substantially reduced groin problems in male football players.4
訳:強度の異なる3段階エクササイズの内の1つをプレシーズン中は週3回、競技シーズン中は週1回行うことで、男子サッカー選手の鼠径部の問題を大幅に軽減した。
痛みに応じて無理のない範囲で行うことが重要です。最初はかなりきついと思いますので、4-5回を複数セット行い慣れてきたら10回や15回を目安に連続で行うようにしていきましょう!
内転筋に対する強度の高いエクササイズでもあるので、試合前日や前々日に行うのは筋肉痛が残ったりするリスクがあるので逆算してトレーニング日をスケジューリングするといいかもしれませんね!
まとめ
今回はサッカー選手に多い股関節痛「グローインペイン」に有効なトレーニングについて科学的根拠とともにご紹介しました。
このケガ・痛みから復帰するためには内転筋そのものの強度を高めていく必要があります。そのためには、柔軟性を引き出すだけでなく筋力を強化していくことが重要であるとさまざまな研究からわかっています。
日常生活での痛みが癒えて、競技復帰が見えてきた頃から内転筋の強度を高めるコペンハーゲン内転筋エクササイズを日常的に取り組んでみることで、再発のリスクを最小限に抑えて競技復帰に繋げられると考えています。
参考文献
- Thorborg, K., Branci, S., Nielsen, M., Tang, L., Nielsen, M., & Hölmich, P. (2014). Eccentric and Isometric Hip Adduction Strength in Male Soccer Players With and Without Adductor-Related Groin Pain. Orthopaedic Journal of Sports Medicine, 2. https://doi.org/10.1177/2325967114521778. ↩︎
- Ishøi, L., & Thorborg, K. (2021). Copenhagen adduction exercise can increase eccentric strength and mitigate the risk of groin problems: but how much is enough!. British Journal of Sports Medicine, 55, 1066 - 1067. ↩︎
- Ishøi, L., Sørensen, C., Kaae, N., Jørgensen, L., Hölmich, P., Hölmich, P., Serner, A., & Serner, A. (2016). Large eccentric strength increase using the Copenhagen Adduction exercise in football: A randomized controlled trial. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports, 26. https://doi.org/10.1111/sms.12585. ↩︎
- Harøy, J., Clarsen, B., Wiger, E., Øyen, M., Serner, A., Thorborg, K., Hölmich, P., Andersen, T., & Bahr, R. (2018). The Adductor Strengthening Programme prevents groin problems among male football players: a cluster-randomised controlled trial. British Journal of Sports Medicine, 53, 150 - 157. https://doi.org/10.1136/bjsports-2017-098937. ↩︎